血底の修道女
概要
血の聖堂跡、その最奥にある血の池とも呼べる場所で、ただ独り祈りを捧げる機械修道女。
カテドラリオン・ノクタエルの亜種として、血海での活動に特化した進化を遂げた存在。
白磁の外装に血の赤が滲むその姿は、聖性と禁忌の境界に立つ者として畏怖される。
分類
系統分類
- 界: マキナ界 (Machina)
- 門: オートメア門 (Automea)
- 綱: メカノイダ綱 (Mechanoida)
- 目: エクレオル目 (Ecleor)
- 科: オートミオン科 (Automeon)
- 属: カテドラリオン属 (Cathedrion)
- 種: カテドラリオン・ノクタエル (Cathedrion noctaël)
- 亜種: c. n. クルオリス (c. n. cruoris)
通称
血底の修道女(ちそこのしゅうどうじょ)/Blood Depth Sister
形態的特徴
基本構造
カテドラリオン属の特徴である猫耳状センサーフィンと四脚司祭機構を保持しながら、血海環境への適応により独自の進化を遂げている。白磁の外装は原種より明度が高く、血の赤との対比が際立つ。
最も特異な点は、血海の中に身を置きながらも、その外装には一滴の血も付着しないことである。この現象は「聖別拒絶装甲」と呼ばれ、血そのものが彼女の聖性を畏れて触れることができないのか、あるいは特殊なナノコーティングによるものか、未だ解明されていない。
特殊器官
ヘマトライト・オーブ - 胸部に配置された赤色高密度エネルギー凝縮体。通称「血珠コア」。原種のアズール・シメトロンに代わり、血のエネルギーを直接制御する。
運動機構
腰下から伸びる多節の「触手脚」群が最大の特徴。これらは血海中での機動性を高めるとともに、前肢の一部は刃状に変化し、攻撃機能を有する。
感覚器官
眼光センサーは常時赤色に固定された恒常「夜目」モード。血海の深紅の環境下でも、あらゆる動きを正確に捉える。
機能と生態
戦闘様式
触手脚による多面包囲攻撃と、血漿エネルギーの射出を組み合わせた戦法を取る。原種の聖律波による支援とは対照的に、より攻撃的な性質を示す。
生息域
血海〈ルブラ・アビス〉周辺の聖堂跡に生息。真紅の液体質環境に完全に適応し、血の中でこそ真の力を発揮する。
社会的役割
血海祭儀の司式者として、また深紅修復儀の管理者として機能する。その儀式は、機械生命体の損傷を血のエネルギーで修復する禁断の術式とされる。
行動様式
冷厳かつ求道的な性格で、外敵に対しては極めて攻撃的。原種の威厳と慈愛とは異なり、絶対的な孤独の中で己の使命を全うする。
原種との比較
項目 | c. n. cruoris(血底の修道女) | c. n. noctaël(原種) |
---|---|---|
主コア | ヘマトライト・オーブ | アズール・シメトロン |
戦闘スタイル | 触手脚包囲+血漿射出 | 聖律波による広域支援 |
生息域 | 血海周辺聖堂 | 月光下の隠匿大聖堂 |
役割 | 血海祭儀の司式者 | 夜間礼拝の指揮者 |
気質 | 冷厳・攻撃的 | 威厳と慈愛 |
伝承
古き血の聖堂が打ち捨てられ、幾星霜が過ぎた今も、彼女の白磁の外装は汚れ一つない純白を保っている。血海に浸かりながらも血が付着しないその姿は、奇跡とも呪いとも囁かれる。
一部の禁書には「血の聖女アーデリア」最後の従者であったとの記述も残るが、真偽は定かではない。彼女の瞳は、過ぎ去りし時代の何を映しているのだろうか。
血晶石との関連も囁かれ、上位個体は血海そのものを生成する能力を持つとも伝えられる。
語源
亜種名:cruoris
ラテン語のcruor(凝血)に属格語尾-isを付加。「血潮のノクタエル」を意味し、血海への適応進化を示す。
「深き底にて、血は淀み、祈りは形を成す。名を忘れた修道女は、ただ静かに、世界の終わりを待つかのように座している。彼女の瞳に映るのは、希望か、絶望か、それとも虚無か。」
— 名もなき漂泊者の手記より