血海〈ルブラ・アビス〉
概要
血海〈ルブラ・アビス〉は、血の聖堂跡の最深部に広がる真紅の液体で満たされた深淵。その正体は血か、あるいは血に似た何か別のものか、未だ解明されていない。底なしとも言われるその深さには、失われた時代の秘密が沈んでいるという。
地理的特徴
位置
血の聖堂跡の地下深くに位置し、かつては聖堂の秘密礼拝所として使われていた空間が、いつしか血色の液体で満たされたとされる。通常の地図には記載されず、ごく限られた者のみがその場所を知る。
東方には「深紅の聖堂」と呼ばれる廃墟があり、その床を満たす赤き水と何らかの繋がりがあるとする説もある。両者の水位が連動して変化するという報告があるが、距離を考えれば不可能なはずだ。
規模
正確な広さは不明。探索者の報告によれば、視界の及ぶ限り血の海が広がり、天井は闇に溶けて見えないという。深さについては「底なし」との証言が多いが、実際に底まで到達した者はいない。
環境
常に淡い燐光を放ち、周囲を薄明かりで照らす。血の香りが充満しているが、不思議と腐敗臭はない。温度は体温に近く、触れた者は「生きているようだ」と表現する。
特異現象
血の拒絶
通常の生物が血海に触れると、激しい拒絶反応を示す。しかし、特定の機械生命体、特にカテドラリオン属の亜種は、この環境に完全に適応している。
非付着性
血海に浸かった物体から血が滴り落ちることはあっても、付着することは稀である。特に聖性を帯びた存在には、血が触れることすら拒むという。
記憶の残響
血海に長く留まる者は、過去の記憶ではない「誰かの記憶」を垣間見るという。それは血の聖女アーデリアの最期か、あるいは更に古い時代の断片か。
生息する存在
血底の修道女
カテドラリオン・ノクタエルの亜種クルオリス。血海の中で永遠の祈りを捧げる機械修道女。
→ 詳細は血底の修道女を参照
血晶蟲
血海から稀に這い出てくる小型の機械生命体。体内に血晶石を宿し、収集者に珍重される。
沈黙の影
目撃証言のみ存在する謎の存在。血海の深部に潜み、近づく者を引きずり込むという。
関連する物品
血晶石
血海の底から採取される赤い結晶。強力な触媒として機能するが、使用者の生命力を徐々に奪うとされる。
深紅の聖水
血海の液体を特殊な方法で精製したもの。一部の儀式では不可欠な材料となる。
歴史と伝承
起源
血の聖女アーデリアが最後の奇跡として自らの血を大地に注いだ時、その血が地下に浸透して血海を形成したという説が有力。しかし、それ以前から存在していたとする古文書も発見されている。
血の洗礼
かつて血の教団では、信徒の最終試練として血海での洗礼が行われていた。生還者は「血に選ばれし者」として崇められたが、その多くは正気を失ったという。
封印の理由
血の聖堂が放棄された真の理由は、血海の拡大を恐れたためとも言われる。現在も徐々に水位が上昇しているという報告があるが、確証はない。
ある古い地図には、血の聖堂と深紅の聖堂が地下水脈で繋がっているような図が描かれていた。もしそれが真実なら、二つの聖堂は元々一つの巨大な聖域だったのかもしれない。
探索者への警告
血海への接近は極めて危険である。防護なしに血に触れた者の末路は悲惨を極める。また、長時間の滞在は精神の均衡を崩し、血海に魅入られて二度と戻れなくなる恐れがある。
「血は記憶し、血は呼ぶ。深き底より湧き上がる紅き潮は、やがて世界を飲み込むだろう。その時、我らは血の中で一つになる」
— 血の教団最後の大司教の遺言